あるところに女の子がいました。
その子は、綺麗で大きなお家に住んでいて、
お父さんと、お母さんと、
おばあちゃんと、お兄さんが2人、
沢山の家族にかこまれて幸せに暮らしていました。
ある日、
お空の上から宇宙船がやってきて、
その宇宙船から、まばゆい光が、
女の子めがけてふりそそぎました。
すると、女の子の声が、
突然出なくなりました。
小さな、
聞こえるか、聞こえないかの、
か細い声だけが残され、
大きくて元気いっぱいな声は、
宇宙船にとられてしまったのです。
別の日。
お空の上からまた宇宙船がやってきて、
目がくらむほどの明るい光が、
女の子めがけてふりそそぎました。
あまりにまぶしかったので、
女の子はぎゅっと目をつぶりました。
明るい光が消え去って、
女の子が目を開けると、
女の子が生まれ育った、綺麗で大きなお家が、
無くなっていました。
宇宙船にとられてしまったのです。
仕方が無いので、
女の子とその家族たちは、
小さくて古ぼけたお家に引っ越しました。
別の日。
お空の上からまたまた宇宙船がやってきて、
その宇宙船から出た光が、
女の子めがけて、
ゆっくりと降りてきました。
女の子は、こんどは捕まってたまるか。
と必死でかけだしました。
しかし、光から逃げ切ることは出来ず、
女の子は目を開けてはいられない程の、
まばゆい光に包まれます。
宇宙船が過ぎ去り、
女の子がごくりと息をのみながら、
ゆっくり目を開けると、
お父さんと、お母さんと、
お兄ちゃん2人の姿が、消え去りました。
大切な家族を、宇宙人に、
とられてしまったのです。
女の子は、おばあちゃんと2人で、
ちいさくて古ぼけたお家で暮らしました。
それからは、もう、
宇宙船が女の子の前に現れることは、
ありませんでした。
女の子は、それから、
今を一生懸命生きました。
自分にはもう、
とられるような物は、
何も残っていないから。
"正しいと、思ったことだけを
ほんとうと、思ったことだけを
美しいと、思ったことだけを"
自分の中に残しておけるように。
声が出なければ、
周りの人の話をよく聞いてあげればいい。
小さなお家で、おばあちゃんを大切に、
暮らしていけばいい。
家族が近くにいないなら、
友達や知り合った人たちを、
家族の様に大切にすればいい。
やがて、女の子は大人になり、
優しくて、聞き上手で、
誰からも慕われて。
たくさんの、かけがえのない、
仲間たちに恵まれました。
ある日、
女の子のおばあちゃんは、
死にました。
その夜、
お空の上から宇宙船がやってきて、
その宇宙船から、
キラキラと、今まで見た中で、
一番輝いている光が、
女の子に降り注ぎました。
柔らかくて、暖かくて、
優しい光に包まれた女の子は、
ゆっくりと、目を閉じ、耳をすませました。
『ワレワレ ハ ウチュウジン ダヨ。
チキュウ ノ ヒトビト ハ
カンチガイ シテル。ワレワレ ハ
ナニカヲ ウバッタリ シテナイ ヨ。
ワレワレ ハ タイセツ ナ モノ ヲ
プレゼント シテル。 ヨク ガンバッタ ネ。
オバアチャンハ、ウチュウ カラ ズット
キミ ヲ ミマモッテ イル ヨ。』
女の子が目を開けると、
そこには、綺麗で大きなお家と
大切な家族がいました。
女の子は、綺麗なお家で、
大切な家族と、
自分を支えてくれる、
かけがえのない仲間たちと、
死ぬまで幸せに暮らしました。
おしまい。
引用文献:1)まど・みちお詩集宇宙の日
⇨ " " 内引用
参考文献:2)挿絵作家morita MiW×楠橋紋織 のハンドタオル
⇨『』内参考。
お誕生日プレゼント、ありがとう、S ♬