こんにちは。
今日は、反回神経麻痺という障害や、その治療について、私が病院で説明された内容を書いてみます。私は、専門学校1年生、19歳の冬に、麻痺した声帯に対する手術を行いました。
『リン酸カルシウム骨ペースト(BIOPEX)を用いた声帯内注入術』
専門学校に入ってから、手術をまでの経緯は以前書いたリンクを貼っておきます。
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当時の私は、心臓の先生の紹介で、同じ病院の耳鼻咽喉科 音声外来という科を受診しました。心臓の主治医に、声の手術をしたいと相談した時に、
「もっと、早く気づいてあげれば良かったね・・・。」
と言ってくれたのが、とても印象に残っています。
それまでの、6年間に思いを寄せてくれたような気がして、少し救われるものがありました。
耳鼻科の先生は、診察後に、手術の説明をしてくれました。確か、病院には1人で行って、説明も1人で受けたと思います。そして、その内容を親に説明して、しばらく考えて、手術をするかしないかを決めました。この時は、もう自立していたつもりだったけど、お金も自分で払っていないし、同意書はやはり親に書いてもらったし、やっぱりまだ未成年で、親に守られていたんですね。
今日は、その時1人で聞いた説明を、当時の資料とメモと記憶をたよりに書き出してみます。頭の中の整理です。2005年の医療情報なので、必要な方は、最新の情報を調べて下さいね。
反回神経麻痺
◯ 喉には、右と左に声帯のヒダが2枚あって、その2枚が内側に寄って隙間なくピッタリとくっつくことで、声が出たり、食べ物をむせる事なく飲み込む事が出来る。
◯反回神経麻痺になると、麻痺した側の声帯が動かなくなり、声帯が痩せてしまい、左右の声帯に隙間が出来てしまう。そうすると、声がかれて出しにくくなったり、食べ物や飲み物が上手く飲み込めず、気管に入ってむせてしまったりする。
◯酷い場合は肺炎などを繰り返す。
◯リハビリなどで改善する場合もある。改善しない場合に、手術が検討される。
◯ 私の場合は、大動脈弓付近の手術時に、神経を切斷した事で麻痺になった。
手術の基本的な考え方
◯ 麻痺して動かなくなった声帯を動かせる様にする手術ではない。
◯ 麻痺した声帯の脇に何かの材料を入れたり、声帯を動かす軟骨の部分に糸をかけたりして、麻痺した声帯の位置を変える(内側にずらす)為の手術。
◯ 麻痺した声帯の位置が内側に寄れば、左右の声帯の隙間が減り、嗄声(声が小さくかれてしまう症状)やむせ等の症状の改善が期待される。
◯声が、元の状態に戻るかどうかには、個人差がある。ほとんどの場合に改善が見られるが、改善しない場合もあり得る。
手術の種類〜3種類〜
① 甲状軟骨形成術:首の皮膚を切開。甲状軟骨に穴をあけ、声帯の脇に固形の挿入物を入れ、声帯を内側に押す。
長所:挿入物が固形なので、吸収されにくい。
短所:首に傷痕が残る。挿入物による異物反応の可能性がある。
②破裂軟骨内転術:首の皮膚を切開。声帯に付着している破裂軟骨に糸をかけ引っ張る事で、声帯を内側にずらす。
長所:挿入物を入れないので、異物反応がない。挿入物が吸収される心配もない。
短所:首に傷痕が残る。手技が複雑。声帯が痩せている場合は効果が薄いことがある。
③声帯内注入術:声帯の脇に注入剤を注射し、声帯を内側に押す。内視鏡科で行う。⇦私がやったのはコレ。
長所:首に傷痕が残らず、体への負担が少ない。
短所:注入剤が吸収されると効果が長続きしない。注入剤による異物反応の可能性がある。
声帯内注入術の注入剤について
◯ 以前はシリコンが使われていたが、副作用等の問題により現在は生産中止になってしまった。
◯ これに代わるものとして、アテロコラーゲンや脂肪、という物が用いられる事が多いが、1〜3ヶ月で吸収されてしまい、効果が長続きしない場合も多くある。
◯アテロコラーゲンは、牛由来の為感染症を発症するリスクがあり、脂肪は、自分の脂肪を使用するためにお腹の皮膚を切らなければならない。
◯ そこで、その欠点を克服できる可能性がある注入剤として、リン酸カルシウム骨ペースト(BIOPEX)という製品を使用する方法を勧めている。
リン酸カルシウム骨ペースト(BIOPEX)とは
◯ 整形外科等では、骨組織の修復などに以前から用いられており、体の中に埋め込んでも、異物反応はほとんどない。
◯ 声帯内にBIOPEXを注入した動物実験でも、異物反応は少なく、少なくとも半年は吸収されないという結果が出ている。
◯ 臨床応用(人に対して使う事)は、2003年から開始。今までに15例に対して行ってきたが、異物反応を示したり、明らかな吸収を示した症例はない。
◯ しかし、新しい注入剤のため、データが少なく、声帯内への注入を行った人の、最長観察期間は、1年4ヶ月と短い(2005年当時)。それ以上の長期のデータはなく、これからデータを集める段階。長期の観察で吸収されたり、異物反応がでる可能性もある。
◯ 注入量が少ない場合は症状があまり改善されず、多すぎると、呼吸が苦しくなる場合がある。その場合は、再手術や気管切開を行う可能性がある。
あなたの場合は・・・
◯ 若い症例に行う事はほぼ初めて。
◯ 今でも日常会話はある程度出来ている中で、この手術をして、あなたが思い描いている程の改善があるかは分からない。最前を尽くすが、声の大きさや出しやすさにどのくらいの変化量があるかは、やってみないと分からない。また、効果が何年継続するのかデータが無いため保証は出来ない。しかし、長期的に効果が持続する可能性も考えられる。
◯ 最終的な決定権はあなたにある。
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こんな感じで、手術の説明をしてくれました。
これを聞いて、何を思ったのか、この後に書いていこうかな・・・。入院前日の嬉しかった事や、手術前夜のエピソードなども。少しずつ、書いていきます。
つづく。