Sweet-pea’s diaryー大人になった先天性心疾患のブログー

大人になった先天性心疾患を持つ私が、あの頃(16~20歳頃)見つけたかったブログを書いています。どなたかの参考になりますように。PC版カテゴリのはじめにからご覧ください♬

私と声②~手術前夜~

  

手術前夜

 

病院へ向かう母と私は、この入院が2か月の長期になる事も、3度手術する事になることも、それまで慣れ親しんだ自分の声とお別れする事になることも、まだ知りませんでした。心の準備期間はなかったけど、あったらあったで思い悩んで辛かったかもしれません。目の前に次々と出てくる敵に、とにかく無心で勝負していく。というスタイル。それもそれで良かったのかも・・・。

 

左側の反回神経は、大動脈弓の近く通っていて、私の身体の場合は、どうしてもその神経を切らなければ、人工血管を付け替えることが出来ませんでした。その事を、私が聞かされたのは、手術開始の12時間前くらい。手術の前夜、消灯前の病室。1人の時に、1人の医師から説明されました。

 

「明日の手術は、声を出す神経を切らないといけないのね。そうすると、手術後は、少し声が出しにくくなるかもしれない。ハスキーボイスみたいな感じで。まぁ、オペラ歌手とかにはなれなくなっちゃうけどね。」

 

サラッと説明されました。サラッと説明されすぎて理解が追いつかなかったし、その後の人生10年以上も悩む原因になろうとは思いませんでした。先生が帰ってから病室はすぐに消灯。その話を家族や看護師さんと話す時間もなく、目の前の事をただただ受け入れるしかない私は、何となく1人でその言葉の意味を考えながら、手術当日の朝を迎えました。

 

1つはっきりと覚えているのは、その先生の説明を聞きながら、

「簡単に説明しているけど、もし私がオペラ歌手になりたい女の子だったらどうするつもりなんだろう・・。」

と思った事です。未来の選択肢を1つ減らす様なことをサラっと言うなぁ。と。

幸いオペラ歌手になりたいと思う事なく、大人になりましたが・・・(笑)

  

この説明の場面は、説明してくれた先生の顔も、その時の空気感も、よく覚えているんです。それまでの当たり前の生活が終わりを告げる始まり、がこの場面だったからかな・・。頭にしっかりときざみこまれています。

 

きっと、あの時の私に必要だったのは、先生から説明された後に、それをどう捉えたのか、どんな気持ちになったのか、そういうのを、看護師さんと話す時間。寝る前に3分でも5分でも。説明されてどんな気持ちになったのか。怖いのか、不安なのか、なんだかよく分からないのか。雑談レベルでいいから、そんな事を誰かと話す時間があったら、少し救われていたのではないかなと思います。

  

最後に、大人になってからの、私の事を少し書いてみます。

 

病院で働いていた時の私は、手術を明日に控える担当患者さんがいたら、仕事終わりのなるべく遅めの時間に、その方の病室によって雑談をする時間を作ったり。訪問看護で働く今だったら、病院で検査や医師の診察を受けて来た患者さんには、

「病院どうでした?」

って一言声をかけて、話し出せるきっかけを作ってみたり、しています。

( もちろんケースバイケースですが・・・。)

 

また、私が説明する側の時。

その方の身体の状態や検査結果、今後の方針などを説明させて頂いた後には、

「いま、とりあえず一気に説明をしてしまいましたが、いかがですか?」

と聞いてみるようにしています。内容がしっかりと分かったのか、それを聞いてどんな気持ちになったのか、嬉しいのか、不安なのか。時には私の見解と本人の感覚にずれが生じているかもしれない。納得いかない事もあるかもしれない。だから、なるべく、一方的にならないよう、相手にも能動的に話してもらう。できれば最後は、安心した表情になってもらいたい。

 

説明する事自体が大事なのではなく、

それを聞いた患者さんがどう感じ何を思ったのか。

これが大事なんじゃないかなぁと思います。

 

これは、私が、 "手術前日の夜の体験" から学んだ事なのかもしれません。

  

目の前の人と、過去の自分を重ね合わせないように。私は私で、あなたはあなた。分かった気になってはいけない。というのは、気をつけなければいけませんが・・・。

 

つづく。