Sweet-pea’s diaryー大人になった先天性心疾患のブログー

大人になった先天性心疾患を持つ私が、あの頃(16~20歳頃)見つけたかったブログを書いています。どなたかの参考になりますように。PC版カテゴリのはじめにからご覧ください♬

ルールが変わった日③〜それ、おかしくない?〜

こんにちは。

さて、今日はやっと、本題につながっていく話しを書き始めたいと思います。

少数派の私の為に、多数派に声をあげて、ルールを変えてくれた、恩師の話。

 

専門学校に入学する頃。私の声は少し小さめながらも、日常生活では大きな支障がないくらいまで、改善していました。正確には、改善ではなく、代償動作による補完。といったところでしょうか。麻痺してしまった片方の声帯は治らないけど、喉周りの元気な筋肉達が、その機能を肩代わりしてくれて(これを、代償動作。といいますが)。ある程度、声らしい声は作れるようになっていました。ただ、本人にしか分からない声に感する困りごとは、毎日の様にありました。話がそれてしまうので、今日それを書くのはやめておきます。

 

動かなくなった片方の声帯に対して、機能を改善させる手術がある事は、高校生の時に母から聞いて知りました。

「あなたが退院する時に、先生が、声帯の機能を改善させる手術がある。という事を言ってたの。でも、お母さん、もうこの子に手術を受けさせるのは懲り懲りです。って断ったのよ。」

私も、今は母親だから、この時の母の気持ちは良く分かります。手術を何度もして、その途中で死ぬかもしれない。大きな後遺症が残るかもしれない。と医師から言われ続けていた母。もう、手術は御免だよ。と思うだろうな。

 

そんな母の思いと、

洋服では隠せない部分に、新たな手術跡が出来る事へ抵抗感も強くあり、

それまでは、手術について、私から主治医に聞いてみた事はありませんでした。

日常生活はなんとか成り立っていましたからね。

 

ただ、理学療法士になりたい。という夢を持った時に、

この小さく控えめな声で出来るのか。

と、少し手術について考えるようにはなりました。

 

そんな悩みを恩師にした時、先生は、

「授業なんかじゃ、患者さんに聞こえるように大きな声ではっきり話せ。って言ってるけどさ、実際現場に出れば、寡黙な理学療法士もいるよ。しっかりと必要な事は話して、きちんと評価して、治療して、治す事が出来れば、そんな人でも患者さんから慕われるんだよ。だから、そのままの声でも、俺はいいと思うけどな。」

と言っていました。

そのままを受容してくれた先生。

それはそれで、なんとかなるよ。と先生。

 

専門学校2年生になり、初めての実習が始まりました。期間は短い1週間。

実習の終わりに、1人の患者さんについて、簡単な発表をしました。

 

ここで、声に関する新たな問題を痛感しました。

日常生活では、問題ないと感じていた私の声。

それは、人との会話が成り立っていたから。

しかし、実習での発表というのは、皆さんに配ったレジュメという資料をもとに、

数分間、1人で大勢の人へむけて、話続けなければなりません。

会話であれば、一言二言話せば、相手が話す番になるので、少し喉を休められます。

発表は、数分間、1人で話続けなければなりません。

 

これは、私の声帯では、きつかった。

声が途切れるし、喉は痛くなるし、息継ぎのタイミングも掴めずに苦しくなるし。

当然、事情をしらない人からは、

「もっと声をはって!」とか、「聞きとりやすい声で話す事もPT(理学療法士の略称)として大事だよ。」

とか言われるし、恥ずかしいし、悔しいし。

初めての実習では、そんな経験をしました。

 

その実習を経て、私は考えました。

日常生活に大きな問題はない。

手術をしなくても生活していける。

でも、私はPTになりたくて。

 

また手術を受けるのには、抵抗がある。

傷痕がまた1つ増えるし、喉周りだったら、洋服では隠せない。

でも、私はPTになりたくて。

 

PTとしては、

これから、学年が上がるごとに、大勢の人の前で症例発表する機会は増えるし。

声が自由に操れた方が、患者さんとのやりとりもしやすいに決まってる。

 

メリットとデメリットを天秤にかけてしばらく悩みました。

 

悩んだ結果、

やっぱり私の夢は、理学療法士になる事で、

それに必要な知識や技術や機能、能力、たくさんあった方がよくて、

声だって、ちゃんと出た方が、きっと役に立つ。

 

いい理学療法士になる為に、手術をしよう。

喉に傷がついても、いい理学療法士になれるなら、それでいいや。

と、最後は迷いなく決意する事ができました。

 

(※後の診察で知るのですが、まだ十数人にしかしていない最近の手技だけど、喉にメスを入れずに、口の中から手術できる方法があって。結果的には喉を切らずに済みました。医療の進歩に救われました。)

 

手術をする事を決めた私は、

今度は現実的な問題を考える必要がありました。

 

手術を受けるとなると、その前後の外来での通院や、手術による入院、術後のリハビリなど、

学校を休まなくてはいけない日が多く出てきます。

目標は次の実習までに、声を治す事だから、手術は早い方がいいのだけれど。

大学病院の受診日は、平日の毎週決まった曜日で、授業とかぶってしまいます。

 

専門教科は得に、休むと欠席点がつく授業があります。

5点くらいならまだ可愛い方で、中には1回休むごとに10点マイナスの教科もありました。

3回休んだら、−30点だから、テストで80点とっても50点。

 

まぁ、落第しなければ、いいか。成績が全てではないしな。

少数派に優しくない社会の構造には慣れてるし、報われない事が多い事も慣れてるし、

それでも頑張っていれば、ちゃんといつか報われる事も分かってる。

今回も、そんな感じで、“しかたがない事”として、自分で納得していました。

 

恩師が、「それ、おかしくない?」

って言ってくれるまでは・・・・。

 

つづく