先生との大切な思い出。
続きから。
先生からされて嬉しかった事。
〇 2度目の手術が終わって、ICUで目を開けたその時、
目の前にいてくれたのは先生でしたね。
朝か夜かも分からない、機械音だけが鳴り響く非日常的な空間で、
先生が側にいてくれて、私は安心した気持ちで意識を取り戻しました。
〇 目覚めた私に気づいた先生。
先生と数秒間目があって、しっかりと私の目を見ながら、
ゆっくりと、穏やかに、だけど真剣な表情で、
首を横に振る先生。
数秒の言葉のないやり取りでしたが、
私はすぐに、今回の手術も成功しなかった事を知りました。
この時、笑顔で胡麻化したりせずに、
子供だけど、1人の患者として、真摯に事実を伝えてくれた事。
先生、ありがとうございました。
〇 次の手術が決まるまで過ごしたのは、大人の心臓血管外科病棟。
先生は、小児科病棟の先生だから、もう私の担当ではなくなりましたね。
それでも、寝る間もないくらい忙しい仕事の合間をぬって、
毎日必ず1回、私の元へ顔を出してくれた先生。
大人の病棟で、おじいちゃん、おばあちゃんに囲まて、
それまでお世話になった小児科の看護師さん達も居ない環境で、
見慣れた先生が会いに来てくれる事。
私にホッとする安心感を与えてくれていました。
〇 大人の病棟でのベッド上安静生活は退屈でした。
私は、両親が買って来てくれる本を読んで時間をつぶしていました。
1日に、2-3冊くらいは読んでいたと思います。
"さくらももこ"のエッセイ集なんかよく読んでたなぁ。
そして、いよいよ読む本も尽きてきた頃、
いつものように顔を見せに来てくれた先生の手には1つの紙袋が。
その中には、ぎっしりと沢山の本がつまっていて。
自分が持っている本は女の子向けじゃないからと、
病棟の看護師さん達にも声をかけて、色々な本を集めてきてくれましたね。
その中の1つが『鏡の国のアリス』。
私の大切で大好きな本。
実は、今お世話になている主治医の先生も、
アリスや、著者のルイスキャロルについてとても良く知っていて。
色々教えてくれて。
私の大切な2人の先生から教えてもらった『アリス』は、
私の中でよりたいせつな特別な本になりました。
〇 私の父が、病棟で音楽を聴けるようにと、
CDラジカセとヘッドホンを買って来てくれた数日後。
先生は、今度は、紙袋いっぱいのCDを貸してくれましたね。
実は、先生の私物のCDは黒人シンガーのアルバムばかりで、
まだお子ちゃまだった私にはよく分からず、全部は聞けませんでした(笑)。
でも、その優しさはすごく嬉しかったです。
ありがとう、先生。
〇 ある日、いつまでたっても先生は現れず。
とうとう消灯時間になりました。
今日は忙しかったんだろうな。と思いながら私は就寝。
翌日。ある看護師さんから教えてもらいました。
『昨日の消灯後、結構遅い時間になってから、〇〇先生が現れたのよ。それで、暗い中、〇〇ちゃんがいる女性部屋に入ろうとして、夜勤の看護師さんに怒らたんですって。いくら先生でも、夜中に勝手に女性部屋に入らないで下さい!!って。』
ちょっと面白くて笑っちゃったけど、嬉しかった。
そこまでして、「毎日1回は顔を出そう」という行為を。
きっと、先生自身が、私の為に何が出来るか考えて、
これだけはしてあげようと決めたであろう行動を。
こんなにも守ってくれて。
今なら、なんとなく分かるけど、やっぱり自分の所属ではない病棟をウロウロするのは目立つし、ましてやまだ研修医で。それも消灯後にウロウロしていたら、いくら白衣を着ていても、病棟の人ではないから、変質者扱いされちゃうし・・・。
そんな、真面目でひたむきな優しさが嬉しかったです。
〇 その後3度目の手術を受ける私ですが、
ICUに入った手術当日も、
意識がもうろうとしていて、目の前の先生の顔は見えるけど、
息苦しさで言葉が発せられなかったあの日も。
HCUに移って、毎日サクションと採血漬けのあの日も。
毎日、毎日、変わらず私に会いに来てくれましたね。
先生は入院した初日から、退院する最後の日まで、
ずっと、継続して、私を見守って下さいました。
それは、先生だけでしたよ。
私が理学療法士になって、どんなに忙しくても、
毎日欠かさずに行っていた事。
それは、担当患者さんのベッドサイドに、リハビリがある日も無い日も
必ず顔を出す事。
これは、私が先生にされて嬉しかった事だったから。
先生からたくさん大切な事を教えてもらいました。
『患者さんに良くなってもらいたい。』と願う、
医療者として一番大切な気持ち。
まっすぐ向き合うその姿勢。
全部教科書にはのっていない事。
心から感謝しています。
※この時と同じ時期の事を書いた記事です
つづく。