親離れと子離れ
前回からの続きです。
私は、こっそりと物件を探し始め、何軒か内見し、仮押さえ、次回本契約。というところまでこぎつけました。
あとは、母に自分の意思を伝えるだけ。
きっと母は怒るし、興奮するし、言われたくないことも沢山言われる。でも、何を言われても泣かないで、しっかりと受け止めよう。そして、自分の気持ちを伝えよう。と心に誓いました。
両親を部屋に呼びます。
私「もう、住む家も決めた。ちゃんと、病院だって行ける距離だし、同じ県内だし、実家にだって来ようと思えばいつでもこれるし、大丈夫だから。」
母『何言ってるの?〇〇くんに、娘は普通の身体じゃないんです。って電話します。あなたに何かあったら、全部〇〇くんのせいにして責任とってもらうからね!』
『もし引っ越すなら、一生許さない。可愛そうね。親から祝福されない結婚なんて、絶対上手くいきっこないんだから。幸せになれないんだから。』
父『なんでそんな言い方するの?娘が幸せになろうとしているのに、なんでそれを応援してあげられないの?』
母『(私に向かって)あなたは何も分かっていない!普通のからだじゃないんだから!』
この辺りで、私はこみ上げてくるものが抑えきれなくなって、悔しくて、涙がポロポロ止まらなくなりました。中学の時から、母の前で泣いたのはこれが初めてだったかもしれません。
〝普通じゃない〟
この言葉は私にとって、一番こたえる言葉でした。それを母から言われるのは、とても悲しい気持ちになりました。
(言いたい事は分かるんですけどね。)
母『何泣いてるのよ。』
少し戸惑った表情だったのを覚えています。
私「もし、〇〇に電話して、私の身体を、責任とか、背負わせるという言葉で説明するなら、明日にでも、私から〇〇と別れる。」
「恋愛すると嫌でも色々考えさせられるんだよ。相手に思い荷物を背負わせることになるんじゃないか。手術跡のない、もっとキレイで健康的な女の人の方を選んだ方が幸せになれるんじゃないか。ちゃんと子供が産めるのか。妊娠に私の心臓は耐えられるのか。いつ状態が悪化するかも分からない。結婚した相手より長く生きられないかもしれない。結婚相手のご両親はどう思うのか。たくさん考えてきたよ。」
私も、堰を切ったように、自分の感情がとまらなくなりました。
「大人になるまでに、身体のこと散々向き合わされてきた。何も分かってないなんて、簡単に言わないで。嫌になる程分かってる。」
「病気の〇〇ちゃんを一生背負っていきます。なんて負担を、好きな人にかけたくない。何かあったら自分の責任なんて思って毎日過ごしてほしくない。もし、病気が悪化して万が一の時があった時、お母さんにそんな台詞を言われていたら、絶対に自分の責任を感じて苦しくさせてしまう。」
「病気のことはちゃんと〇〇に説明している。彼は私の今までの事を初めて話した時、一度だけ涙してくれた。でも、涙はその一度きりだし、唯一、私の経験をかわいそうと言わなかった。貴重な経験だと言ってくれたんだよ。」
「心臓病の私として彼と一緒にいたくはない。私の中の1つが心臓病というだけだから。〇〇ちゃんの事を一生背負っていきます!なんて言葉を言わせたくないし聞きたくもない。それを、お母さんが背負わせると言うなら、迷わず別れる。」
私が、そう言い終わると、母はブツブツ小言を言いながら部屋を出ていきました。
翌朝。
まだ、寝起きでベッドの上でウトウトしていると、母が部屋に入って来ました。そして一言。
『着替えて!今から引っ越し先一緒に観に行くよ!』
「分かった!」
私はすぐさま身支度に取りかかりました。顔は嬉しくて少しにやついていたのを覚えています。
後日、私は親公認のもと、夫との同棲をスタートさせました。あんなに反対していた母ですが、時々遊びに来ては、近くのイオンで買い物を楽しんだり、海の見えるカフェに行ったり、
「駅からも近いし、坂ないし、自然にかこまれてるし、本当に良いところ見つけたわねー!」
と言う母でした。
私と父は目配せし、無言のやり取りをするのでした笑。
これで、親離れと子離れのお話しはおしまいです。長くなってしまいました。読んで下さってありがとうございました。きっと皆さん、母の気持ち、痛いほど分かると思います。でも、そんな時の本人の気持ちも、これを読んで少し想像して頂けたら嬉しいです。